7月の読書感想文。

ハリーポッターと炎のゴブレット(上) J・K・ローリング作 松岡祐子訳

僕がハリーポッターを初めて読んだのは大学に入りたての2000年春、英語の授業で。やや落ち着いたとはいえ未だに人気が高いのはストーリーや世界観の作り方が非常に上手だからだからだと思う。そういや、授業の先生は細身で30代半ばくらいのやけに甘いマスクの男だった。知的で繊細で眼鏡の良く似合う、小説なんかによく出てくるタイプだ。この手の人は女性ではよくみかけるけど、男性では滅多にお目にかかれない。きっと女性のこのタイプはひとくくりに「知的な美人」というくくりに入れることができるけれど、男性の場合はさらに「ひ弱」とか「オタクっぽい」とか「ガリ勉」だとか「暗そう」とか様々なネガティブなフィルターを通過できるような人だけが、ポジティブなくくりに入ることができるからだろうなあと思う。本の内容は、イマイチ。続き物な上に、恐ろしいほどの人気から守りに入ってるのか?文章量も増えたことで前作までのテンポの良さも失われた気がする。それでも最低限度の面白さは保持してた。6点。

ハリーポッターと炎のゴブレット(下) J・K・ローリング作 松岡祐子訳

どうなることかと思ったけど、しり上がりに調子を上げてくるのはさすがの一言。さらに守りに入るどころかけっこう賛否両論になりそうなドキっとするような展開もあってなかなか良い意味で期待を裏切ってくれた。ただ、露骨に恋愛要素を盛り込むようになったのは映画を意識してるのかと邪推してしまう。ハリウッドは恋愛なしでは成立しないのだろうか?まあハリーもお年頃になっただけとも取れるけど。全体的には、それでも1作目ほどのインパクトはなかった。7点。

ブレイブ・ストーリー(上) 宮部みゆき

ゲーヲタ、宮部みゆきがゲームのRPGを意識して書いたという作品。以前模倣犯を途中で挫折したので、一番自分に合いそうな宮部作品をチョイス。それでも駄目だわ。途中で挫折。この人の芸風は人物描写とかをやりすぎてテンポが悪くなりすぎてる印象を受けた。福本信行のカイジなんかも全く同じなんだけど、こっちは大好きなあたり単に僕の好みの問題だと思う。福本の描写は心地よく感じて、宮部は鬱陶しいと思ってしまうというだけの話。人間的に僕と全く違う人種なのだろう。文章自体はすごくうまいし、転がし方も上手だから、人気が高いのは理解できると思った。ただ、僕の感性とは全く合わないことがよくわかったのでもう宮部作品を読むことはないと思う。4点。

キノの旅(1) 時雨沢恵一

人がいろんな顔を持ってるのは当たり前のことで、どんな聖人君子でも嫌な所はあるし狂気の殺人者だってどこかしら救われるような面は持っていると思う。たいがいの人間はイイ所と悪い所がまあ適度な感じに入り混じってて、それが一つの「世間の常識」になる。じゃあ、ある狂気だけを徹底的に濃縮したものを村人全てが「世間の常識」と考えていたら?他の全ては本当に一般的な常識人なのに、ある面だけ狂気を共有している国に迷いこんでしまったら?この作品はそんな感じの話を主人公の視点を通して淡々と静かに描写した感じ。主人公は正義感でもないし、作品も教訓染みていない所もかえって的確に世界観を伝えられているような気がする。個人的にはかなりの当たり作品。8点。

キノの旅(2) 時雨沢恵一

作品にほとんど波がない。良く言えば安定している、悪く言えば物新しさがないか。ただ、まだ飽きるということはない。短編の集まりなので集中して読める。8点。