姥捨て山(2)

テンテン

昔、世の中のあらゆるものが怖かった。特にテレビは怖い番組ばかりだった。

夏の風物詩であるところの「恐怖の心霊体験」はもちろんのこと、子供向けのホラー「キョンシーズ」、果ては藤子不二雄の漫画さえ恐ろしくて眠れなくなるような回もいくつかあった。ドラえもんがネズミを恐れるあまりどんどん狂い出していき、最終的には「ネズミを絶滅させるためには地球そのものを完全に破壊するしかない」という結論に至る回だ。この単行本は今でも持っているので、当時感じた恐怖が読むたびに思い出される。

話が前後するけど、「キョンシーズ」で鮮明に記憶に残っているシーンがある。主人公であるテンテンという女の子の友人の一人である「チビクロ」がキョンシーに噛まれるシーンだ。キョンシーに噛まれた人間はキョンシーになってしまう。キョンシーになってしまった人間には今までの記憶なんてもちろんなくなってしまって、ただただ人を襲い続ける化け物へと変貌してしまう。

キョンシーは人間の呼吸に反応してその存在を認識する。つまり、息さえ止めていればキョンシーがたとえ目の前にいようとも見つかることはないのだ。キョンシーに襲われてしまったテンテンとチビクロ。二人は必死に息を止める。止める。止める。
それでもなかなかキョンシーは向こうに行ってはくれない。もう息が続かない!そう思った瞬間キョンシーは探すことをあきらめたのか、主人公達から離れていく。安堵の息をつくチビクロ。当然小学生の僕もチビクロと一緒に安堵の息をつく。
その瞬間、突然背後からチビクロに噛み付くキョンシー。鳴り響くチビクロの悲鳴。そこで番組は終わる。

この演出は今思うと本当に秀逸だった。何せ6歳の僕が未だに鮮明に思い出せるのだから。今思えばもちろんベタな展開なのだけど、今思うと自分の中でのこのパターンの原点は間違いなくここにあると思う。

本当に本当に怖くて、次の週から「キョンシーズ」を見ることはできなくなってしまった。今でもこの先がどうなったのか気になっている。

話が脱線しまくってしまっているけれども、そんなこんなでまた次回。